癒しの環境
病院における癒しの環境
高柳 和江
1
1日本医科大学医療管理学
pp.92-93
発行日 1996年1月1日
Published Date 1996/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901709
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歴史的にみて,診療所から大きくなった日本の病院においては,医療提供者側からの機能が重視されてきた.平成7年度の厚生白書では,初めて医療がサービス業であると明記されている.アクセスが十分となり,量から質に世の中が注目している.質の良い医療の評価には患者が実際にどのような結果を受け,どのように満足しているかというアウトカム(結果)で測ろうとする流れがでてきた.こうした中で,患者中心の医療が注目されてきた.患者満足度調査も始められてきた1).
患者中心の医療といわれるもののうちで,医療提供者が提供する医療環境に注目してみよう.患者がここにいたら安心だとほっとし,元気になるような気がするもの,落ち着くもの等が本当の癒しの環境と考えられる.身体の病気に苦しんでいる患者は,当然のこと,社会的にも個人的にも病気による影響を受ける.精神的な痛手もある.必ず,心も病んでくるのだ.ここに,癒しの要素が入る.癒しがあると,心の痛手が和らげられ,免疫力が高まり,病気からの回復も早い.後天性免疫不全症であるHIV感染者の最初の治療は,ストレス管理からはじまるのである.ストレス管理により,AIDS発症を遅らせるのである.医療施設には,癒しの環境が必須なのである.癒しの環境は,本来包括的なものである.現在の病院に,どれだけ癒しの環境が認識されているだろう.まず,患者の環境に関する認識から分析してみよう.
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