MSWの相談窓口から
あるブラジル人の帰国
佐藤 和子
1
1海南病院相談室
pp.180
発行日 1995年2月1日
Published Date 1995/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901446
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1994年6月2日16時30分,羽田行きの飛行機に乗るため,1人のブラジル人が寝たままで搬送できる車に乗り込もうとしている.気管切開と鼻腔チューブを入れたままの帰国である.手荷物は,飛行機の中でも使えるように痰を吸引するバッテリー付きの吸引器,チューブから入れる栄養パック,イルリガートル,薬を注入するための注射器,鑷子である.ブラジルから迎えに来てくれた親戚の看護婦と妻が同行する.
患者はHさん.ブラジルから3年間の定住ビザで出稼ぎに来ていて「急性心筋梗塞」を起こし,他院から紹介のあった人である.呼吸停止のため重度の意識障害を起こし,前年の暮れから入院していた.家族は妻と娘夫婦で,主に妻が片ことの日本語でいろいろな問題に対応していた.高い入院費に困っているとの主治医からの紹介で相談室を訪れたのが,妻との最初の出会いである.
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