特集 新時代の病院像
病院の環境整備事業の意義と今後の展望
宮坂 昌利
1
1厚生省健康政第局指導課
pp.32-35
発行日 1994年1月1日
Published Date 1994/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901131
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はじめに
わが国の生活水準は,ウサギ小屋という椰楡に象徴されるように生活実感の伴わない経済大国であるといわれているのは事実である.しかし,長期的に見て日常生活を取り巻く環境が徐々に整備されてきていることは間違いなく,例えば,子供達にさえ冷暖房完備の個室があてがわれ,そこで様々な家電製品をリモコンで操るといった生活スタイルも相当普及していると思われる.
これに対し,病院における療養環境はどうであろうか.一般人が病院の世話になる際,傷病による身体的な負担はもとより,精神的にも不安になるのが一般的であろう.また,国民の約75%は病院でその最期を迎えるのであり,死に直面する場所でもある.こうした施設が,患者ひいては国民のために本当に満足を与えることのできる環境を有していると言い切るだけの自信はないというのが正直なところであろう.一般人の病院に対する大まかなイメージは,リノリウムの床と消毒液の匂いと殺風景な病室といった,機能一辺倒の冷たい印象を脱却していないように思われる.
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