主張
診療報酬の見直しと今後の医療
O
pp.737
発行日 1991年9月1日
Published Date 1991/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900998
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診療報酬体系の見直しへ向けた動きが急である.中医協の小委員会における基本問題の検討を始めとして,医師会や病院団体にも研究会が設置されて,それぞれの立場からの作業が進んでいるという.いずれも従来の医療費改定の方式が限界に来たことを共通の認識として,社会保険給付のあり方にまで踏み込んだ見直しを図る方向にあることが注目される.これからの診療報酬のあり方を考えるには多くの論点があり,そのどれをとっても深刻な議論を必要とする.ここではいくつかの視点を示して今後の方向を探っておきたい.
我が国の医療は,高齢化に伴う福祉ニーズにも対応して,その立ち遅れを補う役割を担ってきたが,今後の高齢者の処遇は,生活支援と社会福祉を統合した観点から見直されなければならない.既に中間施設として老人保健施設が普及しつつあるが,より明確な位置づけの下に長期療養サービス体系の確立が求められている.この部分の診療報酬(むしろ療養費と呼ばれるべきものである)は,長期ケアのあり方を踏まえて支払いがなされなければならない.すなわち,高齢者が必要としている介護を基礎として,QOLの観点からの環境整備と支援サービスを可能とする方向が追求されるべきであろう.
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