連載 今,なぜ戦後医療技術史か・1【新連載】
ハイテク医療への関心のたかまりとその背景
上林 茂暢
1
Shigenobu KANBAYASHI
1
1特定医療法人財団健和会みさと健和病院内科
pp.613-617
発行日 1991年7月1日
Published Date 1991/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900968
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はじめに
新しい医療技術の出現とその動向に国民の大きな期待と関心が寄せられるのは,いつの時代でも変わりがない.コレラなどの急性感染症から結核と,第二次大戦敗戦直後にいたるまでの医療の中心課題だった感染症との闘いをみてもこの点は明らかであろう.
治療といっても,解熱,鎮痛など対症療法の域をこえたものはきわめて少ない.安静・栄養を保ち自然治癒をまたねばならなかった.その間隙をぬい,今日では到底考えられないような治療法が提唱されては消えていった.その中には医学界の主導権を握ってきたものも少なくない.無力感と苦い思いを繰り返してきただけに,ストレプトマイシンの登場に際し,逆に当初懐疑的な医師さえ見られた.いずれにせよ,そこには患者・国民の医療技術への強い願いが投影されていたといえよう.
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