現代病院長論
病院経営25年の経験から—院長の能力と資質、経営管理の課題を考える
伊藤 研
1
1特定医療法人大雄会
pp.798-805
発行日 1993年9月1日
Published Date 1993/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900457
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わが国の医療は,自由主義的・資本主義的発想で行われている一般企業経営活動と異なり,社会主義的性格を持つ統制経済的な国民皆保険制度の下にある.したがって,同一業種間では価格競争の原理が働かず,同一の医療行為に関しては医療の本質と原価に関係なく価格統制的医療費が支給され,より良心的に医療を行えば行うほど収益が低下するといった状況にある.他方,病院の開設主体によって運営費と資本コストの扱いに差があり,経営基盤そのものも公私間のみならず病院ごとに格差がある.そこには院長業務の遂行に支障を生じるような問題が内蔵されているといえよう.
では,院長は何を業務とするのか.この問いに対しては,「一般企業にたとえれば社長業務に相当する」と答えることができよう.院長の業務は,病院の開設主体によっても異なるであろうし,また規模やその病院の持つ機能によっても千差万別である.公立病院の多くは200床以上で,機能的にもこの規模で平均化できよう.他方,民間病院は20床から千数百床までと規模的にも機能的にも大きな差があり,おのずと院長の業務や経営姿勢にも大変な開きが出てくる.中規模以上の病院でも,一般中小企業の社長と同様,経営または運営管理上の問題と現場の業務を兼務する場合が多いのではないだろうか.
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