特集 いま病院トップに求められる能力とは
病院経営の専門職を考える
大道 久
1
1日本大学医学部医療管理学
pp.699-701
発行日 1993年8月1日
Published Date 1993/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900433
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問われる経営の専門性とその理念
過日,経営に行き詰まった病院を買収した新経営陣が,強引な患者確保や保険診療で許容される得る限界の医療内容によって,再建の軌道に乗せたとされる過程のドキュンタリーがテレビ放映されて,医療界に波紋を投げかけた.医療の前で奇妙に従順な患者や,皆保険下で負担感が希薄化したまま急速に医療の経営環境が悪化することの問題点を明らかにしようとした制作意図とは裏腹に,論点を引き出そうとした事例の扱いに批判や議論が寄せられた.
古びたX線装置の代わりに新たな画像診断装置が搬入されてこれまで行われなかった医療が唐突に開始され,地域医療の概念からはほど遠い遠隔の老人病院から高齢者が搬送されて改めて採血が行われ,透析患者の居宅に出向いて転院を勧誘する様子などが臆することなく描れた.批判の多くは,このような事例は例外的で,多くの病院は患者のために厳しい医療環境に必死に耐えているのであり,このような報道は国民に誤解を与えるというものであった.また,医療費抑制策が医療の荒廃を招きかねないほどに至っていることを国民に知ってもらうことは必要であるとする意見も聞かれた.
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