MSWの相談窓口から
外国人の医療をめぐって
高橋 紀夫
1
Toshio TAKAHASHI
1
1佐久総合病院
pp.1030
発行日 1992年11月1日
Published Date 1992/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900232
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例年になく暑い日が続いた8月下旬のある日,E・Tさん(25歳)が医療相談室にやってきた.彼はたどたどしい日本語で,「赤ちゃん,今日退院する.お金は?」と指で丸をつくって私に聞いた.入院費を清算してから退院するよう,看護婦に言われたらしい.「いまお金持っているの?」「ない」「それじゃ払えないね.お金のことは社長さんと相談するから今日は払わずに帰ってもいいよ.看護婦さんにも私から言っておくから大丈夫.わかった?」「うん」彼はボリビア人,といっても二世だから少しは日本語が話せる.私は人柄のよさそうなE・Tさんと連れ立って,産科病棟まで赤ちゃんを見に出かけた.母親に抱かれた赤ちゃんはかわいい顔をして眠っていた.
奥さんのI・Fさんは富山県出身の日本人.E・Tさんが横浜で働いていた時に知り合い結婚したが,まだ入籍しておらず,住民票は富山においたままであった.
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