MSWの相談窓口から
あすなろ会
高橋 紀夫
1
Toshio TAKAHASHI
1
1佐久総合病院
pp.829
発行日 1992年9月1日
Published Date 1992/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900186
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6月下旬の午後6時はまだ明るい.精神科病棟前の紫陽花が夕日に映えて美しい.花の回りに見覚えある顔が集まってくる.退院者クラブ『あすなろ会』のメンバーである.『あすなろ会』は,昭和58年4月に発足して以来,毎月第2と第4の木曜日に開催され,今回で207回を数えている.参加者は多い時で20名,少ない時は10名程の小規模な会だが,若い人が多いだけに活気に満ちている.内容は会員の総意によって決められる.ある時はカレーライスを作ってみんなで食べたり,ある時は病気と上手に付き合う方法をドクターから聞いたり,またある時はカラオケ喫茶で歌ったり,といった具合である.この会を支えているのは2名の若い看護士であるが,その他に,病棟看護婦や医師,ソーシャルワーカー,作業療法士などが毎回2,3名ずつ交代で参加している.
今回は若いA医師とワーカーの私が当番で,コーヒーとケーキを楽しみながら話し合いをすることになっている.男性7名,女性5名,職員8名,合計20名で病棟1階の集会室は満員になった.集まった退院者の顔には,入院中の患者さんには見られない輝きがある.ある者は弱電部品メーカーに,ある者は食品会社に,ある者は共同作業センターにと勤め先はまちまちだが,一様に長い闘病生活と決別して社会で頑張っている人達ばかりである.
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