特集 戦略的病院広報—病院の魅力を高めリスクを減らす
いま求められる戦略的広報
病院マーケティングの本質と戦略的病院広報の勘所
松本 卓
1,2
1小倉記念病院 医療連携課
2病院マーケティングサミットJAPAN
キーワード:
マーケティング
,
病院経営
,
病院広報
,
コミュニケーション
Keyword:
マーケティング
,
病院経営
,
病院広報
,
コミュニケーション
pp.942-948
発行日 2022年11月1日
Published Date 2022/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211794
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■病院にマーケティングは必要か
以前は医療機関が市場原理を理解し「生き残り」を意識して経営を行うことは少なかったように思う.しかし,近年では社会保障費の抑制に伴い診療保険点数が右肩上がりに増え続けることは現実的ではないため,自院の存続をかけた経営が必要となり,ステークホルダーに選ばれるための「マーケティング」を行う病院も増えてきている.ただ,医療従事者の中には「マーケティング=金儲け」と認識し,医療とはそぐわない考え方だと思っている人もいるかもしれない.そういう人はマーケティングを「良くないものを良く見せて売りつける手法」と捉えていることが多いが,そうではない.自院の医療サービスの伝達を行うことが「悪」だとするのであれば,患者は目隠しをした状況で病院を選ぶべきだと言っていることと等しい.それが許される状況があるとすれば,日本の病院は全て同じ水準の医療を提供することができて,どこで治療をしても満足度は変わらないということであろう.そうすれば「病院を選ぶ」ということ自体必要ないのかもしれないが,現実はそうなっていない.つまり,マーケティングとは自院を存続させるためだけにあるのではなく,患者側にも利益をもたらす.加えて日本では,患者側に不利益が出ないように医療広告ガイドラインなどのルールも整備されており,医療機関はこれらのルールに則りながら適正な競争を行うことで社会全体の豊かさに寄与できる.
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