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■はじめに
ビジネススクールとは,リーダーシップ・人材マネジメント・組織行動・経営戦略・マーケティング・会計・財務といった経営に関する知識とスキルについて体系的に教育する大学院修士課程で,修了すると経営学修士MBA(Master of Business Administration)の学位を授与する教育機関をいう.
ビジネススクールには4年制大学を卒業した「新卒」がそのまま進学し,または社会人が会社を休職・退職した上で通学する平日の昼間に開講するフルタイムMBAと,社会人が仕事をしながら通える平日夜間または週末に集中して開講するパートタイムMBAがある.受講形式については,キャンパスへ通学し受講する形式の「通学型」と,インターネットを活用し自宅からでも受講できる「オンライン型」がある.「オンライン型」には海外のビジネススクールが提供しているプログラムもある.授業形式としては,知識の提供を目的とした講義を主体とするものと,知識の提供よりもビジネスの現場での実践知の涵養に重きを置いたディスカッション形式の授業があり,多くのビジネススクールではこれらの形式がミックスされて提供されている.また,生産現場の見学や企業でのインターンシップなどが用意されているところもある.ディスカッション形式の授業では,Harvard Business Schoolに端を発するケースメソッド教育を採用しているところが多い.2020年来のコロナ禍では本来「通学型」であったビジネススクールでも「オンライン型」での授業提供を余儀なくされており,学生同士のWeb上でのディスカッションに工夫が凝らされている.
筆者は消化器内科医であるが,北里大学病院の新病院建設のプロジェクト・リーダーを任されたのを機に,グロービスマネジメントスクール,東京大学病院医療経営人材育成講座,Harvard Business SchoolのExecutive ProgramであるHealthcare Delivery,慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應義塾大学ビジネス・スクール,以下KBS)のExecutive MBA (2年コース)で経営学を学んできた.現在は,大学病院経営,学校法人経営に携わるとともに,大学院でヘルスケアビジネスの講義を担当している.
本稿で求められている「ビジネススクールは病院経営者を育てることができるのか?」というテーマに対し,社会の変化とともに医療提供体制は変革の時代を迎えており,病院が質の高い医療を継続的に提供するために,病院経営者がビジネススクールで経営学を学ぶことの意義は大きい,というのが筆者の回答である.以下にその理由を説明する.
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