連載 世界の健康被害・9
ウランよりもチーズを―オーストラリアのビジネスをめぐって
鎌仲 ひとみ
1,2
1多摩美術大学
2国際基督教大学
pp.736-737
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102218
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オーストラリア訪問
酷暑の日本を抜け出してオーストラリアを訪ねた.世界で最も古いオーストラリア大陸の最南端,南極海に浮かぶタスマニア島で,最初の1週間を過ごした.オーストラリアの中でも最も緑や水が豊かだと言われている地域だ.気候は冬だというのに,早春のような柔らかな日差しが注いでいる.タスマニア大学の学生,ローラによれば,タスマニアは1年中花が絶えないという.だからその花の蜜を集めた「蜂蜜」が,タスマニア名物の筆頭だ.
千メートル級の山脈はうっそうとした古代からの原生林に覆われている.ところがその原生林を,日本企業が伐採してチップにするという自然破壊を長い間行ってきた.東南アジアだけでは飽き足らず,こんなところまで日本の商社が進出してきている.そんなことに驚いていたら,私がタスマニアに到着したタイミングでもっと驚くべきことが起きた.オーストラリア屈指のスポーツウエアの会社が,日本企業の伐採を阻止するために,広大な原生林を買い上げたのだ.日本ではまだまだ影が薄いグリーンズと呼ばれる「緑の党」が世界で初めてスタートを切ったのは,オーストラリア・タスマニア出身の議員からだ.オーストラリアでは,これでますます「タスマニアはグリーンアイランド」として価値が高まると歓迎されている.
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