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■はじめに
医療法人社団悠翔会(以下,当法人)は在宅医療に特化した診療を提供している.2021年5月現在,首都圏を中心に18の在宅療養支援診療所を展開,76人の医師・200人のコメディカルが,常時5,500人を超える在宅患者に24時間体制の在宅総合診療・療養支援を提供している.
在宅医療は病院の後方支援がなければ成り立たない.現在,筆者らは60を超える病院と協定書を取り交わし,安心感をもって診療を行っている.在宅医療を理解し支援してくださっている病院の方々に,まずは心からの謝意をお伝えしたい.
在宅医療における病診連携は,具体的に次の5つに集約される.
①入院患者の退院支援
②在宅からの入院の受け入れ
③必要時の検査や専門診療
④在宅患者への外来診療の伴走(主に専門性の高い疾患を持つ在宅患者など)
⑤通院患者への在宅医療の伴走(主に通院が困難になりつつあるがん患者など)
この5つはすべて連続している.疾病や老化の進行により身体機能が低下すると,通院は困難になる.また,残された時間が短くなっていくと患者や家族の医療における優先順位も変化していく.患者を取り巻く身体的・精神的・社会的な変化に合わせて,その時々に最適なサポートをフレキシブルに提供できる体制を構築するのが,すなわち地域包括ケアシステムの目指すところであると理解している.
当法人の創設は2006年,在宅療養支援診療所が定義されたその年である.当時に比べると在宅患者の急変時の迅速な入院の受け入れ,退院前共同指導の実施など,病診連携の枠組みは非常に円滑に機能するようになっていると日々実感している.
しかし時に,この連携の枠組みの中で患者の思いが置き去りにされていることも目にする.今後,超高齢社会,いわゆる重老齢化がさらに進行していく中,住民が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために,病院と在宅医療の双方が努力し合わねばならない部分も残されていると強く感じる.
本稿では,ご批判も覚悟の上で,真の病診連携とはどうあるべきか,病院と在宅医療機関が目指すべき理想を,3つの観点から共有したい.
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