特集 平成の病院医療から次の時代へ
巻頭言
渋谷 健司
1
1東京大学医学系研究科国際保健政策学
pp.19
発行日 2019年1月1日
Published Date 2019/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210869
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バブル景気に沸いた1989年に始まる平成時代ほど,わが国の社会経済状況や医療のあり方が大きく変わった時代はないかもしれない.昭和時代の人口増と右肩上がりの経済成長が終焉を迎え,急速に少子高齢化やグローバル化が進行し,わが国は世界に冠たる経済大国から低成長成熟社会へと変貌を遂げた.それに伴い,医療,そして,病院を取り巻く状況も大きく変わった.本特集は,医療制度,病院機能,経営,人材,テクノロジーという観点から平成時代における病院医療を振り返り,新しい時代への展望を示すことを試みた.
平成時代は,尾形論文・江利川コメントにあるように,介護保険制度(2000年),地域包括ケアシステム(2006年),税と社会保障の一体改革(2010年),地域医療構想(2014年)という,現在の医療制度にも大きな影響を与えている改革が実行された.その荒波を最も被って変革を迫られたのが,これからを担う若手の病院経営者たちである.急性期病院が地域包括ケアを担う核となる病院機能へと,いつ,どのように転換していくのか,どのように,その先に向かうのか.大田論文からはその時々の経営判断がリアルに浮かび上がる.それを「病院の潜在能力と地域の期待のマッチング」と称した河北コメントは,まさに言い得て妙である.
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