特集 病院は2035年の夢を見るか
巻頭言
渋谷 健司
1
1東京大学医学系研究科国際保健政策学
pp.19
発行日 2018年1月1日
Published Date 2018/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210619
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
保健医療制度は,ともすると近視眼的かつパッチワーク的な見直しを繰り返し,かえって制度疲労を悪化させている.議論の焦点は,2年に1回の診療報酬改定における「パイの奪い合い」や短期的な医療費抑制政策,そして,既存の制度を維持するための負担増・給付削減という議論に終始しがちである.もちろん,こうした地道な積み重ねは必須のプロセスだが,ビジョンなき改革では将来展望が開けないばかりか,改革に不可欠な国民的議論を深めることもできないのではないだろうか.
1961年,ジョン・F・ケネディ大統領は, 「アポロ計画」を立ち上げた.1962年のライス大学での有名な演説では,「われわれは月に行くことを選んだ」「10年以内に月へ人を送る.それは簡単だからやるのではない.難しいことだからあえてやるのだ」と述べ,人々を奮い立たせた.そして,その8年後には,人類の月面着陸を実現させてしまった.このことから,目標を定め,今何をすべきかを逆算(バックキャスト)して考え,それを行うことで結果として目標を達成することを指して,「ムーンショット」と言う.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.