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■はじめに:遠隔死亡診断の背景
超高齢社会を迎えようとしているわが国だが,その時代は多死社会でもある.現在年間130万人の死亡者は今後も増え続け,2040年頃に160万人台でピークに達すると推定されており,看取りの体制整備は早急に取り組まなければならない課題である.平成24(2012)年に厚生労働省(以下,厚労省)「在宅医療の体制構築に係る指針」として,退院支援,日常の療養生活支援,急変時の対応,看取りの4項目についてまとめられ,「住み慣れた自宅や介護施設等,患者が望む場所での看取りの実施」が方向付けられた.1950年代には,8割の人々が自宅で臨終を迎え,病院では1割足らずに過ぎなかったものが,50年後の2000年代になると8割を超える人が病院で死を迎えるようになった.これを自宅や老人保健施設,老人ホームでの臨終に変えてゆこうとする取り組みが始まっている.
そこで問題となるのが,医師が不在の場合の死亡診断である.特に,離島や過疎の進行した地域では,医師による直接診察に時間がかかり,死亡診断の目的だけで不必要な救急搬送があったり,亡くなった患者を長時間放置せざるを得なかったりと,家族や地域に大きな負担を強いているのが現状である.平成28(2016)年度の規制改革推進会議で閣議決定された健康・医療分野「在宅での看取りにおける規制の見直し」では,5要件を満たせば,看護師の補助のもと遠隔での死亡診断を可能とした.それに沿うように「通信情報機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」1)(以下,ガイドライン)が2017年に策定されたので,本稿では適応と実際の手順,想定される問題点,さらに外国の例として英国の実情について紹介したい.
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