連載 事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・8
社会医療法人抱生会 丸の内病院—病院の強みを生かした在宅サービスの展開
関 悠希
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1独立行政法人福祉医療機構 経営サポートセンター リサーチグループ リサーチチーム
pp.246-250
発行日 2018年3月1日
Published Date 2018/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210673
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今や,病院が在宅サービスを行うことは珍しくない.本稿で取り上げる丸の内病院(長野県松本市.以下,同院)の在宅サービスが特徴的なのは,複合型施設によるシームレスなサービス提供と小児訪問看護により,他の在宅サービスとは差別化されている点である.サービス付き高齢者向け住宅(以下,サ高住)と小規模多機能型居宅介護(以下,小規模多機能)を含む複合型施設注1は,構想時点で松本市には事例がなく,同施設が先駆け的な存在となった.また,小児訪問看護は,母体となる病院において小児医療の実績がないとリスク対応が難しく,現在も担い手が少ない.
複合型施設の開設から7年.現在,サ高住は満室,リハビリ専門デイサービスは利用率85%[ちなみに,一般型デイサービスの利用率は約7割(福祉医療機構のデータによる2016年度実績)],小規模多機能は宿泊室も満室のことが多く,順調に稼働している.さらに2017年には地域ニーズに応えるため,地域密着型特定入居者生活介護を病院の1km圏内に開設し,これも即時満室となった.在宅サービスは参入障壁が低く,競争が激化している地域もあるが,同院ではニーズが充足されていない領域を担っていった結果,他の事業所との差別化につながり,経営的にも成功した.
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