連載 多文化社会NIPPONの医療・5
留学生の健康保険はどうあるべきか—医療における多言語多文化先進地域から学ぶ
堀 成美
1,2
1国立国際医療研究センター国際感染症センター
2国立国際医療研究センター国際診療部
pp.166-167
発行日 2018年2月1日
Published Date 2018/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210656
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■日本における留学生の健康保険制度の問題点
前回は,「違法ではないが不適切」といわれる,外国人による健康保険証の使用について紹介した.勉強会で紹介すると多くの人が愕然とする.なぜこのようなことが起きているのだろうか.外国人医療の経験の豊富な医師は,このような「隙間」を狙った健康保険の使用は昔から存在すると指摘している.
今のような状況への転換点は少なくとも2回あったと考えられる.まず,2012(平成24)年の住民基本台帳法改正に伴って,外国人の健康保険加入の条件の線引きが「在留1年」から「3カ月」になったときである.3カ月以上日本に滞在する場合は健康保険に加入する(原則としてしなくてはならない)ことになったことで,短期留学生が健康保険を利用して医療を受けるハードルが下がった.もっとも,留学ビザを発行する法務省にしても,その人が医療を受けることを目的としているかどうかは把握しようがない.後述するように,留学生に専用の健康保険に加入を義務づけることでこの問題を回避する国もある.日本は一般国民と同じ扱いになっているのが制度上の課題である.
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