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■医療パラダイムの変化
今,保健・医療システムが大きな変革を迎えようとしている.2025年に向けて,地域包括ケアネットワークの構築が進み始め,同時に病院も地域医療連携の中で機能再編されようとしている.直近の課題としては,超高齢社会を迎えて,日本の保健・医療システムがそれに対応した姿に変化しなければならない.しかし,これらの変化は大きな文脈で捉えると,日本社会が「成長」や「拡大」を目標としない「定常型社会」に移行しつつあることを示しており,引き続きさまざまな変革が予想される1).病院組織にはこれらの変化に柔軟に対応する能力が求められている.
2015年6月に厚生労働省の懇談会がまとめた「保健医療2035」提言書(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035//)の中には,このことを反映した20年後の医療の形が示されている.「定常型社会」では,現場の医療パラダイムが「医学モデル」から「生活モデル」へシフトする必要がある.すなわち,国民のマジョリティが青年期・壮年期であった1990年代には,特定病因論に基づいた治癒を目指す医療が医療のスタンダードであったが,今後高齢者・後期高齢者がマジョリティとなる時代の医療においては,治癒よりはQOLを維持する医療が必要とされる(図1).そのために,「保健医療2035」では5つのパラダイムシフトを想定している(表1).これらのパラダイムシフトを実現するためにも,今後は技術革新と同時に,「組織マネジメント」,「人と人のコミュニケーション」が今まで以上に必要とされる時代が訪れる.
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