時評
地域保健の将来
宮森 正
1
Tadashi MIYAMORI
1
1川崎市立三田病院
pp.1264
発行日 1989年12月1日
Published Date 1989/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209761
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今さしあたって病気に苦労のない一般人にとって健康にかかわる不安といったら,環境汚染と老後の生活というのが真っ先に挙げられるだろう.公衆衛生が社会不安に応える守備範囲は,古くからの感染症から成人病,老人医療福祉,環境問題にまで広がってきている.文明の進歩と長寿化によって,環境や健康への不安はむしろ増大していると言えよう.
原発事故や輸入食品の放射能汚染,抗生物質とTDT汚染の養殖魚,農薬汚染,産業廃棄物,大気汚染,酸性雨,アスベストそして公害病,基地騒音,などなど日本中に環境汚染による健康被害やその不安が溢れている.しかも,いくつもの公害裁判で争われてきたように環境破壊による被害が出,その因果関係が長い裁判の果てに示されて初めて渋々と行政の対策が取られるという歴史が続けられてきた.行政の姿勢に飽き足らず,市民や草の根の運動家たちによって環境汚染を自らの力で解決していこうという姿さえみられる.
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