精神病院わが病院づくり
開放療法24年の歩み—福岡県・牧病院
牧 武
1
Takeshi MAKI
1
1牧病院
pp.511-517
発行日 1987年6月1日
Published Date 1987/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209087
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大雨の中の開院式
昭和38年5月10日,大勢の方々の祝福と激励をいただき開院式を行ったのを,まるで昨日のことのように思い出すことが出来る.その頃の病院の附近は,一面の茶畑であり,あたりに人家は一軒もなく,我々以外には人の気配もほとんどしない淋しい所で,毎日夕方になると,まだ若かった光吉総婦長は,夕焼けを眺めながら淋しさに涙を流していたのが強く印象に残っている.
開院の準備をすすめるに当たり,いろいろ親身になってご相談にのっていただいた恩師前九州大学精神神経科教授桜井図南男先生は,病院の敷地を見て下さり,「このような辺鄙な所で患者がうまく集まるのかね」と大変に心配され,また私が試みようとしている「全開放」で果たしてやれるのかと,いろいろ心を砕き多くのご心配をいただいた.
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