特集 医師急増時代と病院
医師急増時代の到来と病院に及ぼす影響
川添 善弘
1
Yoshihiro KAWAZOI
1
1病院管理研究所経営管理部
pp.925-931
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208438
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医療需給関係の変化
医療需給関係とは,国民が求める医療サービスと医療機関が提供するサービスとの相互関係であり,基本的には医療機関の保有する人的,物的条件により定まる.医師が十分な時間をかけて診断し,看護婦が懇切な世話をしようと思っても,人員が不足していれば,その条件の下で最善を尽くすほかはない.物的条件についても同様である.人口過疎地の医療機関では,精密な検査や複雑な手術のために,患者を他の医療機関に移送することが望ましいと判断した場合でも,相手側の事情や搬送上のあい路があって,移送できない場合もある.
反対に,都市部の高機能病院では,軽症を含む多数の外来患者が来院するほか,所定の診療が終了し,退院可能になった患者家族が,帰宅後の生活(療養)条件の不十分さや,再発のおそれを訴えて在院期間の延長を求めることもある.病院としては,外来患者が多ければ高度の診療を必要とする患者を得るチャンスが増えるというメリットがあるが,在院日数の延長は急性患者の入院を妨げるので,できるだけ回避したい.しかし,家族の介護が不十分で,訪問サービス(保健指導,看護,ホーム・ヘルプ等)も不徹底,さらに特別養護老人ホームも満杯という状況の下では,患者を他の老人病院等に紹介したり,自ら,慢性病棟や第2病院を設置することになる.
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