特集 老人保健法と病院医療の展開
老人保健法の影響とその対応—国立精神療養所の場合
室伏 君士
1
Kimiji MUROFUSHI
1
1国立療養所菊池病院
pp.592-594
発行日 1983年7月1日
Published Date 1983/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208063
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
老人保健法に対する所感■
老人保健法の主意をどうとらえるかについては,その全般に対する個人的見解でなく,現に自分のある状況の立場から述べることにする.したがって,国立医療機関の,しかも入院治療を要する痴呆老人を扱っている一精神病院の管理者(精神科医)としてということになる.
さて本年2月1日に施行された老人保健法は,特に数年来,隠然として社会問題化しつつあった老人医療問題が,一つの社会対策として打ち出された現れとしてとらえることもできる.従来の老人対策には二つの方向があり,その一つは比較的健康な老人に対する発想で,老人の生きがい,平和な老後,美しく老いるなど標語化されたものに見られるような,いわば福祉面からのもので,これは活発である.他の一つは病的なもの,すなわち寝たきり老人,恍惚の人,痴呆老人などと称せられる老人に対する処遇に関するもので,これは前者に比べて一般的には悲惨視されがちで,老人問題の際にはあまり前景化されずにあり,特に重症なものは医療にかかわってくる.老人保健法では,前者から健康づくりや予防というようなものが導き出され,後者と連動しているが,これはこれとして意義も深いが,現状では無理があり,困難・混乱を来している.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.