特集 老人保健法と病院医療の展開
老人保健法の問題点と老人医療—地域診療所の立場から
大林 輝明
1
Teruaki OHBAYASHI
1
1大林医院
pp.575-578
発行日 1983年7月1日
Published Date 1983/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208057
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老人保健法は悪法か?■
様々な危惧と憶測と批判を浴びながら,昭和57年8月10日臨時国会を通過,昭和58年2月1日実施されるに至った老人保健法であるが,施行されるや否や新聞紙上には老人閉め出しの第一弾として,入院中の老人患者が強制的に退院させられるといった記事が掲載される始末である.退院を迫られるご当人もさることながら,老人患者の比率が設けられて大あわての病院も大変である.これらみな新法律の生み出した結果であることには違いない.そして,この法の発想の原点には医療費抑制という大目的が控えているのであるから,少なくとも,高福祉,低負担とつい先ほどまで叫ばれて来た時代はもう終わりを告げたと断言して良いだろう.低成長へ向けてのマイナスシーリングを旗印に掲げて進む政府の苦悩も理解はできるが,老後の幸福を大まじめに考え抜いた法であるかどうか,はなはだ疑問に満ちた内容であるのも事実である.
どだい経費節減のために作られた制度にそう結構づくめの内容を望むのが無理な話で,せめて中に盛られた良い部分を,有効に活用させるための努力を皆で考えてゆかねばならぬと思う.本法は周知のごとく医療の部分と医療以外の保健事業に大別され,医療と保健の統合というお題目がキャッチフレーズとなっている.
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