病院精神医療の展開
病院精神医療チームにおける臨床心理士の役割
大田 民雄
1,2
1上智大学(比較文化学科,心理学)
2三枚橋病院
pp.897-900
発行日 1982年10月1日
Published Date 1982/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207863
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残念ながら我が国では,精神医療,その他の領域における臨床心理士の役割は,独立した専門機能としてまだ定着していない.したがって治療チーム内での役割も,病院経営者や他の治療スタッフの考え方,臨床心理士自身の能力などによって全く異なっており,ある所では自立した治療者として認知され,他の場所では未熟な半人前として扱われている,といった状態である.米国で発達した臨床心理士という職業は,歴史上様々な文化的,政策的,経済的,社会的理由で,日本では比べものにならないほど遅れを取っている.我が国の臨床心理士の多くは,かつて米国でもそうであったように,専門教育の不足,実力不足,役割の不明確さ,社会的地位の不安定などのため,職業的なアイデンティティー危機に苦しんでいる状況ではないだろうか.病院内臨床心理士として熟練した先達が多く育っていないので,若い中堅の臨床心理士たちが自らの役割を切り開いてその地位を築こうとしている段階であろう.現実とのギャップはまだ大きいものの,目標として掲げられている精神医療チーム内の役割とその任務は以下のごとくである.
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