バイオエシックスと医療
3.真実告知(Truth Telling)について
木村 利人
1
1ジョージタウン大学ケネディ研究所バイオエシックスセンター
pp.236-237
発行日 1982年3月1日
Published Date 1982/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207696
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病気の治療に当たっては,医師の指示・命令が絶対であり,それに従わないならば責任を持てないというのが従来の「治療する側の論理」でしたし,一般にもそれは当然のことと受け止められてきました.
しかし,一方で,時には真実の診断結果の内容が,正しく明確に患者に伝えられないままに「治療する側」の指示に従えるのだろうかという患者の側の疑問があったことも確かです.それに,従来は患者の不利(例えば治癒の見込みはないなど)になることは告げないのが「医の倫理の原則」とされてきていたからです.治療にも限度があり,死が確実と診断された場合,むしろはっきりと告げて欲しいし,死への苦しみや悩みを分かち合って欲しいという「治療される側」あるいは「死に行く人々の側」の論理に,耳を傾けようという変化が医療の現場に起こってきているのが米国の現状です.煙草を吸い続けたい,入浴したい,犬などの愛する動物をベッドで抱いてみたい,家族とともにいつも過ごしたい等々の患者の希望を,もっと大胆に認めてもいいのではないかという考えも当然出てきます.現に死の末期患者を暖かく看護するホスピスなどでは,これらを当然のこととして,受け入れるケースも増えつつあります(『ホスピス—末期ガン患者への宣告—』ビクター・ローズマリー・ゾルザ著,岡村昭彦監訳・木村恵子訳,家の光協会).
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