看護のための集団力学入門・3
ソシオメトリーと行動生態学的技法—方法論(2)
岡堂 哲雄
1
1聖路加看護大学
pp.793-799
発行日 1972年6月1日
Published Date 1972/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916358
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仲間の選択と拒否
昼食時の院内職員食堂の情景を思い浮かべてみよう.窓ぎわのテーブルについている4人の看護婦は楽しそうに語り合いながら,食事をしている.そのテーブルより大きな食卓には,2,3人ずつまとまって同様に食事を楽しんでいるようだ.全体の雰囲気が明るいのに,その食堂のすみには,ひとりで壁に向かってひっそりとミルクを飲んでいる人がいる…….このように,人びとが集まるところでは,人の集合と分離の現象を見ることができる.
誰でも自分の好みの人と食事をしたり,ボーリングに行きたいと思っている.仲間がいないとさびしい.学級のなかで孤立している生徒は,街角のグループに友だちを探すし,職場に友人がいない看護婦は外部の団体やクラブに加入するか,あるいは親しい友のいる病院に転職するかもしれない.毎日の生活を通して,人びとは好き嫌いの感情の論理によってほかの人たちに近づいたり,いやな人を避けたりする.同じ仕事であっても,Aさんから頼まれると拒否するのに,Bさんからの願いであれば受けいれてしまうということもある.また,あそぶ時にはC夫君の方がD男君よりよいとか,相談相手にはE雄君がよいという具合に,仲間を目的によって選ぶということも若い人たちの問にはしばしば見られることである.
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