巻頭言
これからの生態学
吉川 春寿
1
1東京大学
pp.1
発行日 1971年2月15日
Published Date 1971/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902881
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科学・技術の巨大化が進んで,われわれ人間のくらしがよくなつたと喜んでいるうちはよかつたが,それがたちまちに限度をこえてかえつて人間の生活をそこなうような環境を作り出している今日この頃である。
医学の進歩といえども例外ではない。たとえば薬剤の進歩によつて今まで不治の病だとされていた病気がなおせるようになつた一方,思いもかけない副作用が表面にあらわれて,畸形が出たり,身体不自由になつたりして,社会問題をひきおこしている。それよりも何よりも,死亡率の低下が行きわたつた結果として,世界人口の自動触媒的な増加が進み,この調子でいくと食糧生産が将来はたして世界人口をまかなつていけるのか,という深刻な心配まで生じてきた。食糧生産に大きく寄与していた農薬が食物連鎖をたどつて人体にも危害を及ぼす危険も生じてきて,一体どうしたらよいのか,不安になる。
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