特集 医療費の限界と病院経営
国際的に見た医療費の動向とその対策
紀伊國 献三
1
1筑波大学社会医学系
pp.934-937
発行日 1979年11月1日
Published Date 1979/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207010
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
先日発表された我が国の国民医療費は,昭和52年度で8兆5,686億円といわれる.過去において医療費は年率20%近い伸びを示し,遠からず医療費の爆発現象があると諸方面から指摘されている.医療費の国民所得あるいは国民総生産に対する割合が年々高くなっていることは,その伸びが他のいずれのサービス費用よりも高い割合で上昇していることを示している.この現象は我が国だけでなく世界の先進国のいずれにおいてもみられている現象である.昭和52年度の厚生白書に発表された欧米4か国の医療費を,我が国の国民医療費の概念に合わせて修正した値は表1に見られるとおりである.
ここでは医療費に対する国民所得比を比較しているが,1975年での我が国の5.08%は他の国のいずれよりも低く,他の国では8%台を示しているところが多い.しかし,注意せねばならないことは,いずれの国においても毎年の伸びが急速であるが,過去10年間における伸びの割合は我が国が世界の中でも最高の伸びを示していることである.医学と公衆衛生の進歩がなされればなされるほど,他方,医療に要する費用が多くなるという皮肉な現象に,先進国はいずれも悩んでおり,これは最大の社会問題となっている.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.