人
心臓外科のパイオニア榊原紀念病院 榊原仟氏
太田 八重子
1
1東京女子医大,外科
pp.16
発行日 1979年1月1日
Published Date 1979/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206746
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昭和35年胸部外科学会て,青柳安誠先生が,会長の榊原仟(しげる)先生を評して,"スカッとさわやかな人"と言われ,会場は同感の意をこめた爆笑てどっと沸いた.清潔な人である.気取りがなく,公私を混同しない,思ったことはすぐ実行に移す行動派.それでいて他人への思いやりがある.傍の人を楽しませる人間的魅力に富む人でもある.聖マリアンナ医大の徳川英雄講師が,榊原仟先生の眼は実優しいと言う.その優しさは,愛息,愛嬢へ注ぐ慈愛の眼差しそのものと思う.20数年前のことである.入局1年生の岩渕汲先生が,医局で荷物を解こうとしていた時,先生が,「どれ,おとうちゃまに貸してごらん」と,ご家庭の言葉を出してしまわれた.
昭和24年7月,東大から東京女子医大(当時は医専)に外科教授として,周囲の猛烈な反対を退けて,赴任されたその理由は唯一つ,学生のためにであった.容赦のない情熱を学生の教育に,同時に診療と研究に旺盛な精力を傾けられた,物資不足の悪環境下て次々と手術や研究を完成され,学会への発表,執筆と寸暇を惜しまれた.優れた外科医であり,本邦心臓外科の開拓者であることは余りにも有名である.昭和30年,日本心臓血圧研究所を設立.48年,筑波大学副学長に就任.52年,榊原紀念病院を創立,現在院長として寧日なく活躍されている.多趣味で,特に油絵は二科展入選4回,ゴルフもお好きであるが,米子夫人には一歩を譲っておられる.
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