特集 変貌する病院事務
見直しを迫られる病院事務
石原 信吾
1
1病院管理研究所経営管理部
pp.714-718
発行日 1978年9月1日
Published Date 1978/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206631
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まえがき
以前は,病院では,玄関を入ってすぐのところに必ず事務室があり,そこには木の机や棚がごたごたと置かれ黒い腕カバーをつけた事務員が,何となく帳簿をつけたり,ソロバンをはじいたりしているというのがふつうの姿であった.一般的に見て,この姿は現在でも基本的にはそれほど大きく変っているようには思われない.診療所から発達してきたわが国の病院において,事務にも診療所的原型がずっと残っているというふうに考えられる.しかし,これは単に病院には限らず,わが国のほとんどすべての事務室に共通した風景とも見られるから,その原因はもっと深く,事務という仕事の本質そのものの中に求められるものかもしれない.
病院は,患者のために診療を行う場所であるから,どんなにしても,事務という仕事がそこでの中心的働きとなりうるはずはない.病院での主役は,あくまでも医師をはじめとする薬剤師,看護婦,放射線技師,臨床検査技師等々の診療ないしは医療関係職員であり,事務関係職員はそれに対する脇役かないしは裏方でしかないというのが従来からの一般的見方であったと言える.しかも,診療関係職種のほとんどは国家試験による資格を必要とし,業務上高い知識が要求されるところから,専門職種と呼ばれているものである.となると,資格もいらず,またそれほど高い専門性を必要とするとも見られない事務職員が,その中でどうしても軽視されることになるのは止むをえない.
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