看護婦長日誌
人と人との間—手術部
近森 芙美子
1
1横浜市立市民病院
pp.64
発行日 1977年7月1日
Published Date 1977/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206283
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母親になった看護婦
4月○日
「おはようございます」とC子が爽やかな顔で私の机の前に立った.いつになく早い出勤(?)と,思う間もなく,「おかげさまで産後の育児時間が終りました.今日から平常勤務になります.どうも長い間ありがとうございました」という.「ああ……」と私も,瞬間,納得の笑顔になり,「これからも頑張ってね」と彼女を励ましながら一種の感慨が胸の裡をよぎった.
ちょうど去年の今頃,C子をはじめとして,私の職場の若いナースが次々と結婚し,ほとんど同時に3人が妊娠した.3人目から,妊娠の申し出があったときはさすがの私も大きな息をつかざるを得なかった.横浜市の場合,妊娠と同時に1日1時間の時差出勤が認められ,産前8週間,産後8週間の産休,そして生後1年3か月までは毎日1時間の育児時間が認められている.働きながら出産,育児をするのだから当然これだけのことは考えてあげてもいいのだが,3人重なるとなると,これはキビシイ.しかも3人とも,手術室を出たくないという.私も覚悟を決めて,自分なりにこれを受けとめてみようと決意した.限られた人員の中で,これらの3人が孤立しないためには,他の同僚との間に本物の連帯感が問われることになる.私は,この出来事を,妊娠者側と,これを受けとある側と,双方いずれも大差ない若者同志であるだけに,今後相互の関係にどんな変化が起るかを注意深く見守ることにした.
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