当直医日誌
奇跡は二度と起りませんよ
小林 祥泰
1
1北里大学病院・内科
pp.49
発行日 1977年4月1日
Published Date 1977/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206204
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昭和47年○月○日
何年たっても当直には不安がつきまとうが,Fresh manの時には,その不安にもまして新鮮な期待が大きいものである.
この日は当直勤務が始まったとたんに救急車がやってきた.心臓発作らしいとの電話をうけ,とにかくとんで行った.まず顔を見る.チアノーゼもなく意識もはっきりしている.脈が触れるのを確認して,まず一安心.しかしやけに脈が速い,160/分以上もあろうか,患者は胸が苦しいと訴えている.病歴を聞くと以前にも同様の発作あり,WPW症候群といわれているとのこと.しかし今日は数時間も持続して治らないという.すぐ心電図をとるとまさに教科書どおりの発作性頻拍である.まだ循環器をローテーションしていない私でも診断はついたのだが,治療となると全く経験がない.うろ覚えの知識をひっぱり出してAschnerなどやってみるがとまらない.これ以上ポンプを空まわりさせては心不全になってしまうと思い,ジギタリスを静注しておいた.そして恐る恐るインデラールを静注してみたが,やはり効かない.Obenに連絡するが,病棟でも急変の患者がいるらしく手が離せないという.とにかくCCUに入院させることにした.
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