医療への提言・6
「医療保障」の活路を求めて
水野 肇
pp.80-83
発行日 1976年12月1日
Published Date 1976/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206105
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「医療保障」というのは,いまや,どこの国でも避けて通れない問題となりつつあるようだ.アメリカのような国でさえ,国民健康保険を真剣に検討しており,医療を自己負担で払うことのできる人々は,いまや国民全体のほんのひとにぎりくらいしかいない.というのは,医学が進歩し,医療が重装備になり,かつてのようにわずかの検査と,経験によって成立した勘による診療がなくなってしまったからである.「病院」は,生産工場よりもずっと複雑で高度のメカニズムをもち,それを駆使することのできる医師を養成するためには,10年以上の歳月を必要としている.
かつて,医療の世界では「保障か保険か」ということが議論されたことがある.この議論の中心議題は,国がすべてに責任をもつナショナル・ヘルス・サービスの方式がよいか,それとも組合保険や民間保険(1部自己負担)によってまかなうのがいいのか,その方式をめぐって行われた.これは必ずしも結論はでなかったが,端的にいえば,前者は税金中心,後者は掛け金中心といった色分けもできた.
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