一頁評論
医師の注意義務と保険医療との矛盾—インスリン注射の保険給付上の問題点
榊田 博
1
1日本バプテスト病院
pp.64
発行日 1976年7月1日
Published Date 1976/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205961
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医師が課せられている各種義務のうち,治療に際して直接重大な関連をもつものに「注意義務」がある.その一つに療養指導の義務(医師法第23条)があげられる.医師は患者を診療したときには,本人またはその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない.
国民皆保険制度の脊日の状況下では,医療保険制度にもとづく診療業務を外にして医業の成立を考えることはできない.保険医療機関が担当する療養の給付および被扶養者の療養の範囲,診療の一般方針などは,健康保険法第43条の4・第1項および第43条の6・第1項の規定に基づいて定められた「保険医療機関および保険医療養担当規則」によつて規定されている.この規則第13-15条にも,先に述べた医師法第23条に関速する療養および指導の基本準則が示されている.医療の責任を全うするため,医師はこれを遵守するのは当然のことと思われる.にもかかわらずここに一つの問題がある.というのは,このような規定を生みだす健康保険法が,医師の診療を制約し医師の義務履行を阻害する規制や行政措置を設けているという大きな矛盾である,その1例が在宅療養糖尿病患者のインスリン注射の問題である.
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