一頁評論
精神障害者の自殺と暴力行為
西堀 恭治
1
1帯広・道立緑ケ丘病院
pp.80
発行日 1976年1月1日
Published Date 1976/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205810
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何日かに1度は,必ずといってよいほど自殺の新聞記事が見られ,時にそれは傷ましい無理心中の形をとる.もっともらしい理由のついていることも多いが,一昔前までは神経衰弱,最近ではノイローゼ,というように,精神障害が原因にされていることも間々見られる.
他方では,殺人などの暴力犯罪が精神障害のせいにされることも多い.特に,動機が不明で世間の耳目をひくような形の場合には,犯人が誰とも分らぬうちから,やったのは変質者だという記事になる.最近はさすがに変質者という言葉はあまり見かけないが,かつては,かかる犯罪は変質者の仕業に相違なく,変質者はすべからく離れ小島に隔離せよ,と叫ぶ有名人もいた.今でこそ新聞は,「精神医療の問題」などと,精神障害者の側に立つかのように振舞っているが,「精神病者の野放し」などと煽情的に書き立てていたのも同じ新聞だったから,真の理解に立ってというよりは,時流に乗っているだけ,というのが真相であろう.
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