一頁評論
地域医療と「病院人」
弓倉 藤楠
1
1元 板橋区医師会病院
pp.76
発行日 1975年12月1日
Published Date 1975/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205783
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現在,地域医療という言葉はどこでも誰にも使われているが,その意味づけや実践の方法についての理解が,必ずしも共通していない.したがって地域医療展開の状況をみると,「地域のニーズに応じて」と表現されていながらも,地域分析が十分なされていなかったり,方法論も画一的あるいは散発的であることが多い.また医療の一貫継続性に欠けており,地域医療展開後の評価も十分行われていない.
たとえば,病院の建物や設備が巨大になると「わが病院は地域の中核病院である」と自称しているが,そこで行われる医療は病院内だけのテクノロジー志向型の医療であり,機能そのものは古い時代の延長線上にあるケースが多い.すなわち,患者について地域の中の人間としての捉え方をしていない.患者中心という言葉をよく耳にするが,院内だけの患者中心では,真の地域住民の福祉とはつながらない.地域における人間中心という言葉に置き換えられる必要があろう.
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