特集 保険経済と病院の赤字
現医療費下における病院の赤字—公的20病院の経営分析資料を中心として
針谷 達志
1
1病院管理研究所経営管理部
pp.37-41
発行日 1974年11月1日
Published Date 1974/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205475
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はじめに
狂乱物価に象徴される現在の経済社会において,病院の経済危機はますます深刻化しつつある.昭和42年以後の社会保険診療報酬是正の遅延は,病院の経営成績ならびに財政状態を悪化せしめた大きな要因であったが1),同時に,最近の医療の発達は病院の設備投資の増嵩を不可欠ならしめ,病院経済の悪化をますます増悪させる結果をもたらした.今日,病院の維持はきわめて困難な課題となっている.
平均的立地条件で平均的機能をもつ公的一般病院はもとより,僻地等不採算地域の病院や高度不採算医療,先駆的医療を試みる病院の赤字はとくに巨額となり赤字が病院機能に及ぼす影響は少なくない.病棟閉鎖をはじめ各種投下設備に生じる遊休状態,収益の外来依存および薬品収益依存等がこれである.赤字の巨額化に伴い,職員や設備のみならず患者数さえも,その供給いかんにかかわらず縮小せざるをえない病院も考えられるところである.公的な大規模一般病院でこれらの職員を十分に配置した施設では,病床100床あたりの赤字額が,医業収支の段階ですでに1億円に達する施設も稀ではない.赤字発生の原因は,今日の社会保険診療報酬が前記のごとき特殊機能,もしくは一般に高度の機能に対して十分な補償を与えていないことと,経常的な人件費の上昇,ことに昭和48年度においては前年比25-30%に達する上昇が作用したことはいうまでもない.
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