今日の精神医療・21
精神科の救急医療体制—アメリカの実情から
中久喜 雅文
1
1University of Colorado Medical Center
pp.80-84
発行日 1974年9月1日
Published Date 1974/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205443
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はじめに
救急医療という言葉から連想されるのは,救急外科疾患,とくに交通事故・その他の事故による外傷,急性の内科的疾患などによって生体が生命の危機にさらされている状態に対する緊急の医療であろう.したがって従来の救急医療室での治療も,主として外科ないし内科的治療が中心をなしていた.アメリカでは大学病院または総合病院(ことに公立の)にはたいてい救急医療部があり,それは入院病棟や外来とは別個に専属のスタッフによって独立して運営されている.このような救急医療部には,最近精神科のスタッフも参加して,毎日24時間救急精神科医療に従事している.
このように精神科が救急医療にのり出してきたのは,過去10年間のことである.筆者が1962年コロラド大学医学部で精神科のレジデントをしていた時,病院の当直医が夜中に連れてこられる緊急患者の治療や処置にあたっていたが,63年ごろから救急精神医療部門が独立し,専任の精神科医,ソーシャルワーカー,看護婦,レジデントなどがチームを組んで活躍するようになり,病院当直医は入院患者だけにその責任領域をしぼることができるようになった.このように救急精神医療部門が独立したのには,それなりの歴史的背景がある.
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