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—P.L.エントラルゴ著・榎本稔訳—「医者と患者」
佐藤 智
1
1東京白十字病院
pp.76
発行日 1973年6月1日
Published Date 1973/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205026
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‘医者と患者’のかかわりあいのむずかしさ
最近,私はショッキングなことに出会った.毎週一般病棟の総回診をしているが,先日ある個室にはいったら,重症で付き添っておられた患者さんの夫人から‘回診をしてくださらなくてけっこうです’といわれた.この患者さんは16年間私がみてきた方で,肝硬変がじょじょに進行して重篤になり,入院してこられた.幸いに肝臓病専門の医局員が受け持ってくれ,最善の努力を傾け,病状は逐一報告してくれたので,私は気にはしながらも,病棟へはあまり訪れなかった.
患者さんのご家族にしてみれば,16年もの間毎月のように接していた医者だから,重症になって入院した今は,常に患者さんの傍にいてほしい,少なくも毎日来てほしい,と思われたのにちがいない.それなのに‘総回診’という形で訪れたことに反発を示されたのだと思う.申し訳ないことをした.
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