病院史のひとこま
国立病院の再編成(2)—‘国立’の地方,私大移譲・移管問題
尾村 偉久
1
1国立小児病院
pp.69
発行日 1973年6月1日
Published Date 1973/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205022
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昭和25年の医療制度審議会答申の趣旨にそって,国は現行の医療法を制定したのであるが,さらに旧陸軍病院施設をそのまま転用して発足した国立病院体制についても再検討を加えることとなった.その結果,昭和27年に至って,「国立病院特別会計所属の資産の譲渡等に関する特別措置法」すなわち国立病院の相当数を地方公共団体に移譲する法律が,参議院の議決を得られないままに,衆議院の再議決によるという稀有な形式で成立をみたのである.
当時,国立病院を地方公共団体に移譲することの可否についての論争の焦点は,上述したわが国の医療機関整備方策の中の‘代表的な公的医療機関として……国立病院を整備する’ことの趣旨をめぐって,片や質的にとくに高い病院が国立病院であるべきとする立場と,片や地域住民の,国の責任による病院医療保障の最後の寄りどころを国立病院に求めるべきとする立場とに集約された.前者は行政当局の方針であり,後者は主として国立病院職員,地方自治体,地域住民の声であった.
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