病院史のひとこま
国立病院の再編成(1)—‘国立’創設の頃
尾村 偉久
1
1国立小児病院
pp.69
発行日 1973年5月1日
Published Date 1973/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204994
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日本医療団の設立(昭17)
昭和20年の終戦を機に,100余個所の国立病院がいっせいに発足したことは,わが国の病院史のうえで見のがすことのできない画期的事柄であったと思う.明治維新に始まった近代国家としてのわが国の歩みの中で,一般国民の一般疾病の診療を目的とする国立の医療施設(病院)は,終戦までは皆無であった.もっとも,国立癩療養所(らい患者用),鉄道病院・逓信病院(職員とその家族用),陸海軍病院(軍人用),傷痍軍人療養所(傷痍軍人の結核,精神病,頭部戦傷および温泉治療用)が設けられていたが,いずれも特定の対象を目的としており,また国立医育機関(帝国大学,医科大学)の付属病院があったが,これは医学の教育・研究を主任務としていて,そのために必要な臨床教育手段としての患者の診療を取り扱っていた.
一方,この期間のわが国全般の方針は,富国強兵をモットーとする中央集権の傾向が強く,現在公社経営となっている鉄道,電信電話,専売も,終戦までは,それぞれの省に直属する国の直轄事業であったし,また都道府県の知事(地方長官)以下行政を管掌する職員は,すべて内務省に所属する国の官吏であって,通常の事務に従事するもののみが地方公務員の身分であった.
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