病院と統計
狭くなる日本列島
石原 信吾
pp.10-11
発行日 1973年3月1日
Published Date 1973/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204928
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夏目漱石の小説"三四郎"のはじめに,主人公が熊本から上京する途中,名古屋で降りて一泊するところが出てくる.当時は名古屋と東京はそんなにも遠かったわけである.ところが,現在では新幹線でちょうど2時間.通勤しようと思えばできないこともないくらいの近さになった.もちろん,実際の距離は三四郎時代と変わるはずはない.変わったのは時間的近接距離である.この時間距離は,交通機関の発達によって短縮する.そして,最近は,その交通の面にほとんど革命的ともいえるほどの大変化が起こっており,とくに大都市間の時間距離の短縮が急激に進んでいるのである.
そうした時間距離によって地図を書きなおしてみたらどうなるであろうか.その場合は,ある地点を中心としたそれぞれの地図が書かれることになるが,地域間で時間距離の短縮の程度が異なるために,ある方向では非常に収縮するが,他の方向ではそれほど変わらないということから,地図の形が変わったり,あるいは遠近が逆になって形がねじれたりすることが起こるものと思われる.
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