研究と報告【投稿】
近代病院の組織管理—その実証科学的管理
吉田 尚美
1
1大同病院
pp.107-110
発行日 1972年6月1日
Published Date 1972/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204698
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はじめに
病院組織については,理論的には医師組織を医師団として独立させ,病院組織の外におくという山元(1969)の考え,あるいは病院を部門別に合理的組織,人間関係論的組織,行動科学的組織と分けて管理するという私(1970)の考えなどいろいろの扱い方はあるが,現実のわが国の病院組織はおおむね古典的組織,これに類するものによる.つまり院長より各部長,各科医員というように機能別組織としてラインでつながっており,それぞれ部門別の独立は強い.ことに診療部門においては,その専門的性格のゆえに各科独立,不可侵の帝国を築いており,そこで上下間のマン・ツー・マンの相互作用が行なわれている(図1).
このような伝統的組織におけるマン・ツー・マンシステムでは,上司対部下の相互作用が主で,部下同士の横のコミュニケーションはほとんどない.したがって単一の科,たとえば外科の長が問題を提起する場合でも,外科だけの見地から最良となるような決定を院長に求め,院長も外科長とのマン・ツー・マンの交捗だけでは他の部門,内科,あるいはパラメディカル部門といった広い他の部門の長のもっている事実,情報,知識というものを幅広く収集することが困難で,たとえそれが外科以外の部門,または病院全体の立場から大きい犠牲を要するような問題であろうと,あえて承認するというような危険をはらんでいる.
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