麻酔科医日誌・9
麻酔医の不足
山下 九三夫
1
1国立東京第一病院麻酔科
pp.72-73
発行日 1971年9月1日
Published Date 1971/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204429
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500名しかいない麻酔専従者いったい日本の麻酔がどのようにして消化されているかは,その調査がなかなかむずかしい.たとえば人工妊娠中絶が年間150万件行なわれたとすると,その大部分がいわゆる静脈麻酔で行なわれていると考えられるので,静麻の麻酔件数は150万以上ということになる.しかし手術中に必ず独立した麻酔科医が必要なのは,麻酔技術が完全に独立していないわが国では,主として麻酔器を用いる吸入麻酔であるとすると,その件数は健保の請求などから推定すると年間150万件程度と考えられている.
これらの数字は,日本麻酔学会が中心となって,厚生省とも連絡し,更に確実な数を把握しなくてはならない.一方年3〜4回,麻酔科標榜審査会が審査,医道審議会を経て認可される麻酔科標榜医の数は,本年5月現在で,適当な指導者のいる病院で5年以上専従した者という第一項—482名,300例以上の麻酔器を用いた全身麻酔の経験をした者という第二項—2010名,これらと同等以上と思われる外国での研修者という第三項—89名,合計2581名であり,指導医の数は223名である.このような麻酔科標榜医がはたして麻酔を担当しているかとなると,第一,第三項の合計571名は大部分が麻酔を担当している者と考えられるが,第二項はほとんどが他科と兼任であり,少なくとも麻酔専従者とは考えられにくい.したがってわが国における麻酔専従者は現在訓練中の者を含め500名内外と考えられる.
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