病院の広場
精神科病院の一隅から
鈴木 喬
1
1茨城県立友部病院
pp.17
発行日 1968年11月1日
Published Date 1968/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203484
- 有料閲覧
- 文献概要
近年,精神病院のあり方が国内的にも国際的にも注目され始めた。国内的には,昭和32年結成された"病院精神医学懇話会"が本年度から"病院精神医学会"に発展したし,国際的にはWHOの専門委員会が精神病院問題をとりあげ,昨年暮以来英国精神病院協会のD. H. Clark博士の日本の精神病院視察があり,そのレポートがこのほどWHOを通じて厚生省に報告された。
一般に,精神病院の任務は精神障害のため社会性を失なった人に対して,再び社会に適応できるように医学的に指導することである。したがって病院の建築や運営方針はもちろん,その他すべてが患者の社会再適応を促進させる方向に向かわなければならない。しかしながら,しばらく前までは精神病院といえば危険な患者を収容する施設としか考えていない者が多かったのである。たしかにかつてはたくさんの閉鎖病棟を持ったcustodial (拘束的)な運営が精神病院の主流を占め,患者の再適応よりは患者を社会から隔離する方向をとっていた時代もあったし,まだこのような段階からじゅうぶんに脱けきっていない病院もある。だが,現在の主流は再適応のために開放管理(open door policy)をとり入れた社会復帰(rehabilitation)を主軸としたtherapeutic (治療的)な運営に方向づけられ,精神病院の体質はいちじしく改善されつつある。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.