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—島内武文著—「病院管理学 医療概論編」(第2版)
守屋 博
1
1順天堂大学
pp.24
発行日 1968年4月1日
Published Date 1968/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203320
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大局的な把握と判断を与える
わが国には7,000の病院があり,7,000人の院長がいる。そのうち病院管理を学問的に勉強しようという人が何人いるであろうか。個人病院の場合は,直接自分の財布とつながるものだから,一生懸命にならざるをえないが,これはそのへんの八百屋や呉服屋と同じで,管理学というほどのものではないだろう。公的の大病院の院長の場合こそ管理が必要であり,従業員のためにも患者のためにもいい管理をやる義務があるわけだけれど,なかなか管理にとりくもうという気にならぬものである。それは管理などは一段下の学問であって,医師のとりくむほどのものではないと考えるか,自分がいい診療をやり,またいい診療ができるようにしておけば自然に管理もできるという考えからきている。剣道の達人や射撃の名人はただちに名司令宮になれるという考えである。今の複雑な病院管理はそんななまやさしいものでない。近代人事管理・経理管理・施設管理などのほかに,社会学・公衆衛生などの幅広い知識と,それを病院でいかす創造的な指導力をもたねばならぬ。
従来の病院管理学が医師出身の院長に受け入れにくかったのは,あまりに管理の現象,実務に走りすぎたためであって,大局的な把握と判断をしようという大院長にあまりに繁雑であったからではなかろうか。
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