書評
—天児 民和 監・陣内 伝之助,諸富 武文 編—外傷外科全書 第3巻 頭部
坪川 孝志
1
1日本大学脳神経外科
pp.374
発行日 1973年3月1日
Published Date 1973/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203297
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脳神経外科において,頭部外傷の問題は,すでに啓蒙期をすぎて,一般化されたものとなり,多くの救急病院はじめ外科病院でも,実のある成果が挙ぐられつつある。しかしまた一面,さらに新しい診断,治療面での工夫が臨床応用にうつされつつあるのが,現況である。この時期に脳神経外科のトップレベルにある諸家により,改めて頭部外傷の病態,診断技術,手術手技などの問題が総括的に分担執筆により,まとめられたことは,誠に意義深いものといえる。
本書の内容は急性期,亜急性期,慢性期,さらに後遺症と頭部外傷の各過程にそくして分類されているので,日常頭部外傷患者を治療している臨床家にとつては,誠に実際的で頭部外傷をどう診断し,どう治療していけばどの程度の合併症の発生がみられ,どの程度の後遺症の遺残があり,生命の予後はどうなるかが,簡単に理解されるようにできている。この面の工夫は見事に本書により結実されたといえよう。しかも比較的難解である事柄が,単純な表現で巧みに記載されている。臨床家にとつて誠に頼りになる本であり,頭部外傷の診療にあたる臨床家にとつては座右の書となりうるであろう。
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