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滅菌の原理と実際(4)
牧野 永城
1
1聖路加国際病院外科
pp.15
発行日 1968年4月1日
Published Date 1968/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203316
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- 文献概要
ウィールスの熱抵抗
前回の細菌の生殖型および芽胞のもつ熱抵抗の話しを補足して,ウィールスの熱抵抗性について述べておこう。ウィールスも種類によって熱の抵抗性は異なるが,一般に細菌の生殖型に準じて考えてよい。湿熱55〜60℃,30分でたいていのウィールスは死ぬが,乾燥状態では相当の乾熱に耐えるものもあり,たとえば種痘ワクチンのウィールスは乾燥していると,100℃の乾熱に10分は耐える。過去10年ばかりの間に感染性肝炎と血清肝炎のウィールスがとくに問題となっているが,このウィールスは飲料水の中の塩素でも死なないし,注射器や注射針も短時間の煮沸では完全滅菌は得られない。また消毒薬に短時間浸しただけでもだめである。このウィールスの熱滅菌については,いろいろの報告もあるが,アメリカのNational Institute of Healthでは血清肝炎ウィールスで汚染された器物は,最小限15ポンド(1.0kg/cm2)の圧で121℃,30分間オートクレーブしなければならないし,乾熱なら170℃,2時間を必要とし,煮沸では30分を必要とすると規定している。このウィールスは細菌の芽胞に匹敵する程でその滅菌には十分注意する必要がある。
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