病院の広場
コップの中の嵐
棚橋 三郎
1
1山形県立中央病院
pp.13
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202774
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終戦後早くも20年は夢のごとくに流れ「戦後」はもう終わった……とは数年来よく聞かれるコトバであるが,本当に「戦後」はもう終わったと言い切れるのであろうか。日本中のあらゆる部面を詳らかに検討すればするほど,自信をもって「然り」と答え得る人はないであろう。たしかにいろいろの方面で戦前には予想だもしなかった発展,進歩,改善を見たものが多く,われわれの眼を見はらせるに十分である。だが反面,終戦当時のみじめな状態から脱却できずに底辺でうごめいているものも頗る多い事実も否定し得ないであろう。
わが医療界を一べつして見ても「戦後」は一体いつ終わるのかと寒心に堪えないのが皆に共通した心理ではあるまいか。たとえば,病院の数は今6,000を越していると言われ,病床数も飛躍的に増加し,その中のごく少数の病院はたしかにデラックス化した。また管理運営の面においても,終戦直後からの占領軍の強力な指導監督とその後の厚生省による継続的な病院管理講習を受けたお蔭で,各病院とも意欲的に自からの病院を新しい軌道に載せ,もしくは載せたいとの熱意を持っているのは事実である。
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